近江商人の『三方よし』
来年から拠点を置く(予定の)滋賀。
そこに源流がある、『三方よし』という言葉があります。
江戸時代に全国で活躍した、近江商人たちの「売り手よし、買い手よし、世間よし」の理念を指すキーワードです。
「売り手(生産者・販売者)、買い手(販売者・消費者)、世間(地域社会)すべてに利益をもたらすのが、正しい商業のあり方である」
一見、ただの理想論に聞こえるかもですが、数百年も前の時代から、近江の商人たちはこの『三方よし』を実践することで、各地で高い信頼を獲得していました。
そして実際、持続性の高い事業展開に、繋げていったようです。
高島屋、伊藤忠商事、ヤンマー、トヨタ自動車、ワコールなどなど、近江商人の流れを汲む企業は、現在も色々とあります。また、滋賀にある企業では、『三方よし』を経営理念として明文化しているところも、実は結構あるようです。
残念ながら、日本の誰もが知っているほど、メジャーな理念ではありません。社会人でも、知らない人は結構います。
しかし社会や経済の基盤も大きく変わってきた時代だからこそ、敢えてこの言葉を見直して、事業やサービスに取り入れようとしている人が、今増えているように感じます。
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正直、20世紀の後半に、この理念がどれくらい世の中で納得感があったかと言うと、かなり疑問です。人口が増えて経済が急拡大する中で、売る側は圧倒的に強かったし、世間はどんどん個人に分断されていきました。
けれど、それが終わったこの成熟の時代、「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」という発想は、色んな事業に、素直に刺さったりするんじゃないでしょうか。
ここにきて、情報技術のインフラが整ってきたことも、大きな契機です。
インターネットが普及して、約20年。特にこの5年はスマートフォンの登場により、色んな情報が、かつてでは考えられないくらい、簡単に共有される時代になりました。
マーケティングもメディアも、マスからソーシャルへどんどん移行しつつあり、不誠実な商品・サービスだと判断されると、市場から全く相手にされなくなる状態が、生まれつつあります。
逆に、顧客目線を貫き、ソーシャルネットワークの中で信頼を得ることができれば、小さい事業でも十分に生き残っていくチャンスが出てきています。
ちゃんと社会から信頼を得られることが、今の、これからの、ビジネス。まさに近江商人がやってきたことなのかなと。
社会問題を解決し、企業価値の向上させ、適切な利益を得る…最近、これまでのCSRのを発展させた、CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)という考え方も注目されていますが、『三方よし』を実践している企業からすれば、「それまんまうちら(=近江商人)やん」というところかもしれません。
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今、個人的に立ち上げようとしている、サービスがあります。
色々な縁があり、僭越ながら代表として、実行に移しつつある事業ですが、「買い手」や「世間」が良くても「売り手」が良くなかったり、「売り手」のモチベーションを重視して考えると、「世間」にサービスとして広がらなさそうだったり、これがなかなか難しい。
また当然ですが、自分たちがきちんと稼げるモデルにしないと、持続可能性が失われてしまいます。(ただ、この重要性も近江商人はきっちり指摘してるのがすごい。)
サービスのバランスが崩れていないかを見直す上で、『三方よし』はどこかで意識しておいた方がいいだろうなぁというのは、開発の要所で、何となく感じるところがあります。
近江の国に縁がある者としても、やっぱり事業の核に入れ込みたいところ!
忘れないようここに宣言して、開発をがんばります^ ^
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